2010年5月17日月曜日

月刊スピリッツ05号(2010年02月号)

この号は、『ザワさん』が表紙で、その読み切りも載せつつ、作者の三島衛里子とあだち充の対談も掲載されていた。 この号を買った当時にこの対談だけ先にざっと読んでたんだけど、今回も改めて読んで面白いと思った。 ゲッサンで若手漫画家連載陣が、あだち充のスタジオへ見学に行ったレポ漫画での口調もそうだったけど、この対談でのあだちの口調も、ざっくばらんでちょっと怖いというか、サバサバしてて独特の空気を醸し出していて、この怖いんだかただサバサバしてるだけなんだかよく分からない感じが、昔よく出会った大人って感じがした。 小津安二郎監督の『お早う』で、子供に向かって「おい」「おい」 って声をかける大人の男が出てくるんだけど、その声のトーンもまた怒ってるんだか普通なのかよく分からないんだけど、とにかく怖い感じの声で、あだちの口調を読んでいると、なんとなく『お早う』のその声を思い出した。 あと、前にも書いたかも知れないけど、『ザワさん』に出てくる男の子って、佐藤宏之を思い出させるような所がある。

そういえば、月スピには創刊号からずっと対談企画のようなものが毎号続いてるけど、これはレギュラー企画ってことかな?、だったらいいなあ。 ただ、先月号の信濃川日出雄とすえのぶけいこの対談は、漫画家同士の馴れ合いを読まされてるようで自分には面白いと思えなかったけど。

『ゼブラーマン2』は、あらすじをコマ割りしただけのような急ぎ足の漫画で、面白くはないんだけど、最近の漫画に長くなりそうな話運びが多い気がする事や、自分がじっくり話が進むのを読みたいこととか色々考えさせられた。 初期の漫画って、絵巻が漫画化したような、簡単な童話に絵がついたようなものがあったけど、ああいう漫画ってなんていうんだっけかな、この1話を読んでそれを思い出したけど、こういう風に話がさっさと進む漫画もありではあるなと思えた。 『ゼブラーマン』の三池監督のコメントは面白かった。

『ミル』は相変わらず猫も人間化した状態もいいなあ。 猫の可愛さと女キャラの可愛さが混ざり合って妙な魅力になってる。 今月号から移籍?してきた『スキエンティア』はいきなり6話から始まって、予告で「次週、堂々完結」とか書かれても、そんなの知らないってのと思った。 月スピ読者をスピリッツ本誌も読んでること前提にし過ぎなんじゃないのかなあ。 表紙の「涙が溢れるSFシリーズ」って紹介コメントもあざとくて読む前に変にハードルを上げてしまうので、涙なんて書かない方が良いと思う。 内容的にはつまらなくないけど可も不可もない感じ。 設定的には田中ユタカの『愛人 AI-REN』と似ていて、違いは性処理用ロボットかどうかと、世界が終わりそうかどうかなどなど。

『ウシハル』は、っていうかゴトウユキコはニヒリズムと暗さの無くなった山本直樹みたいな漫画だなあ。 牛が擬人化して見える少年という設定が特にどうということのない展開をする漫画でおもしろさがよく分からない。 『ふわり!』は、一種の熱血物だと思うけど、昔良くあったような既視感のある漫画を再生産してやってるだけにしか自分には思えなくて、それプラス何かの新しさみたいなものを感じられなかった。

『強制ヒーロー』は、青野が昔好きだった女性の結婚式に出てヘマをやらかす話だったのだけど、その憧れてた女性が全然魅力的に見えないので、青野が式に出るか迷ったり、出て迷惑かけてショックを受けたりする心の機微が伝わってこなかったのが残念だった。 もちろんそういう関係性は頭では分かるけども。 それと、結婚式の二次会のシーンで、引きで全体を見せるコマが1コマくらいしかなくて、モブもそんなきっちり描かれてないせいか、青田が騒いだり吐いたり、他の出席者が殴ったりした時の場の空気が全然分からなかったのも気になった。

『淀川ベルトコンベア・ガール』 今回は、かよが那子の友達の誕生日に手作りのおいなりさんを持ってくんだけど、ネットでしばしば話題になる、暑い日のハイキングか何かでおはぎを持って行ってみんなに引かれる女の人の話みたいな展開で、既にかよは場の空気に耐えきれずに飛び出してはいるけど、この後おはぎが手を付けられずに捨てられそう(那子だけ食べる可能性もあり)だし、既視感ありまくりの展開でもったいないと思った。

今回は『路上力』や『名門女子大生妄想文学』の文章物が巻末に纏められてたけど、こういうのは今までみたいに漫画の途中に配置して欲しい。 漫画を読み続けて少し疲れた時の箸休めに読みたいものだから。 まあ最初から順に読みがちな自分自身の都合だけども。 でも『名門女子大生妄想文学』は、スピリッツ編集部の邪な目的でやってる企画にしか思えないし、あと、色んな人に月スピを読ませて感想を聞くアンケート企画は毎回無理に答えてもらってる感があるし、特に面白くもないので無くなっても良いと思う。


気づくと5号目で既にゲッサンよりちょっとおもしろいかも?程度な雑誌になってしまってる。 ゲッサンの連載漫画には思い入れがまだあるけど、月スピの連載漫画にはそこまでの気持ちは持てないかな。 それは月スピに長期連載が少ないのとゲッサンよりも雑誌を数ヶ月分一気読みして印象が薄いからかも知れない。 雑誌全体の印象を比較すれば、ゲッサンの方が読み通しやすいように思う。 月スピの連載はおもしろいのとそうでないのの差が激しくて、ゲッサンは差はそんなに大きくはなくおもしろさの中間層が多いって感じかな。

0 件のコメント: