2013年3月9日土曜日

ゲッサン28号(2011年09月号)

  • 『よしとおさま!』 (28話)父親が会長をしている犬飼グループの次期会長指名を受けるために、よしとおが犬飼家のパーティーに出席させられる、という話。  有力者達の前で犬飼グループの跡継ぎを発表すれば、よしとお暗殺を狙っている勢力も手出しが出来なくなるだろう、という理由が弱いし、事実この機会を狙われる展開なわけだけど、シリアス要素多めだし、いつものようなドタバタのくり返しよりはましな展開かなあ。

  • 『鉄楽レトラ』 (4話)鉄宇がダンススタジオで会ったスタジオの持ち主の孫に、ダンスを教わることになる話。  今回の話は可も不可もなくって感じだった。 その孫が一見女の子に見えるし女性の制服を着ているんだけども、男の子である可能性があるのがなんだかなぁという感じ。

    この孫は双子で、落ちていた男子の生徒手帳はそっくりな双子の別人という可能性がなくもないけども、色んな少年誌青年誌に女性漫画家が増えたり、女性読者受け狙いの作品が増えててるだけに、今女性漫画家が少年誌で女装した男子を描くのには、少年誌という枠としてなんだか抵抗がある。

    あと、耳の描き方にクセがあるのがやっぱり気になるなあ。 り妙にとがっているし、両手をゆるく合わせた図のように見える。 今回は26ページ。


  • 『QあんどA』 (28話)幽霊である庵堂兄が、遊歩の兄の恋愛に協力しようとしたり、遊歩が兄の恋愛にやきもきする話。  兄が好きになった女性と一緒に暮らす男が、その女性の兄弟だという事に遊歩がすぐ気づかないのは、天然としても無理があると思えた。 ただ、自分が海で溺れたのを助けたのが庵堂弟だと思い違いしてた事もあるから、勘違いするのは一貫した性格ともいえるのかな? あと、アシスタントの描いたであろう91ページ下の風景や鎖の絵のタッチがあだちっぽくなくて違和感があった。

  • 『waltz』 (23話)、岩西に殺人依頼をしたコンビニの店長は、若い頃からの異常な犯罪者であり、帽子卿は、その店長に影響を受けた模倣犯だった、という話。  コンビニの店長の正体が分かった回だった。 自分の模倣殺人をくり返す帽子卿がヘマをして首折り男に目を付けられ、その首折り男と帽子卿が争ってる時に、首折り男に自分の顔を見られてしまった事から、コンビニ店長は岩西に首折り男の殺害を依頼するわけだけど、快楽殺人者にも色んな種類の人間があるという事を示しつつ、以前もあった、人殺しと殺し屋の違いという話しをさらに踏み込んで、殺し屋は依頼者の言うことを聞くだけのロボットなのか、という事を描こうとしてるように思えた。 殺し屋にも色んな種類がいるってだけかも知れないけども。

  • 『ぼくらのカプトン』 (52~54話(最終話?))インターハイの準々決勝の最後のPK戦で、主将の柴田が外して敗退する、という話。  感傷的な描き方をしていたけど特に響くような無いようでは無かった。 PKを雑念のせいで外すとか笑えないし、感動もしないし。 そもそもこの作者は微妙な心の機微を表現するのが上手くないと思う。  第一部完みたいな感じだったけど、新章として続くらしい。 でも、この設定でこれ以上話の広げようがないんじゃないだろうか。

  • 『BULLET ARMORS』 (15話)イオンが無意識に使った、オーバーライドというトレマの能力を一時的に進化させる力で、カルトとの戦いは一気にイオンの有利になったが、そこにカルトの仲間が現れたのだった、という話。  敵の味方が現れて優勢と思われたイオンが一気にピンチにになるのは面白かった。 これでワンピースを思い出させるギミックがなければ良いのに。 この作者は漫画しか参照すべき物をもっていないのだろうか。

  • 『ハレルヤオーバードライブ!』 (28話)ゲリラライブ直前に、ギターの楓が行方をくらまして、代打で若葉が参加することになる、という話。  楓が来なくなって若葉が代役をやるとい予想は当たったけど、若葉にギターをやらせるために意図的に楓がいなくなってるっぽいのが予想外だった。

    楓のような、何か隠された意図があって行動している登場人物は、話を面白くするので嫌いではないけど、今回の楓の行動は、展開としてそんなに盛り上がらなかったなあ。 今続いてるエピソードは、若葉の姉からの自立やコンプレックスからの解放的な話なのだけれども、若葉は周りにお膳立てされて行動してばかりなので、あまり自分の意志で行動してる感じがしないのが気になる。


  • 『FULL SWING』 (16話)工場で働く仲良し3人娘の1人であるイチの家は実はお金持ちで、自分と違い、恵まれた環境にいた事を知ったそらは、騙されたような気持ちになってイチと仲違いしたのだが、イチが家出した理由を知った事で、ヒロ子と一緒に手助けしようとする、という話。

    登場人物達が物わかりが良すぎて、あっさり全てが上手く収まってしまい物足りなかった。 この漫画を古く感じるのは、話の設定だけではなくて、実家からの電話に「ゲッ」って書き文字を入れてみたり、話を盗み聞きするのを植物に隠れてだったり、よくありがちで使い古された表現をしているからでもあるのだけど、漫画の原作というのははどの辺まで細かく書かれているのだろうか。 相変わらず「てめぇ」って言葉遣いに違和感を感じる。

    あと、イチの実家が、家というより小学校や博物館などの公共施設にしか見えなかったな。 それは、生活感が感じられない建物だったっていう事でもあるんだけれども、そらやヒロが座っていた庭かどこかの野外スペースも、家の庭ってよりは校舎裏に丸いテーブルやイスを持ってきてるだけに見えた。 それから、登場人物達の服装ももう少し気を遣って描いて欲しいかも。


  • 『ここが噂のエル・パラシオ』 (28話)桜花とアズミの試合当日に忠輔は、試合の不穏さを感じ取ったアズミの所属団体の人間から、無効試合の筋書きを提案されるのだった。

    ここに来て急に試合の裏側であるプロレスのブックの話とかが出てきた。 今まで作中では、プロレスのリングの設置や後片付けなどの裏話は描かれた事があったけど、試合運びの決め事などの裏側は描かれてなかったので、いきなりな感じがした。 ドラマ化されたということで、そのドラマの内容との関連とかあるのだろうか。


  • 『マコトの王者』 (28話)人の絆を邪魔なものとして排除してきた天堂と、家族や仲間の絆によって強くなった大地は、お互いの価値観を賭けた乱打戦にもつれ込むのだった、という話。  2人の中身が入れ替わったことで、家族の絆とか、学ぶことが多かったのは天堂の方だよなあと思う。 だから、やはりこの作品は天堂が主人公になってしまったのもやむを得ないのかなという感じ。

  • 『信長協奏曲』 (28話)サブロー扮する信長一行が敵に寝返った近江を避け、伊勢・終わりを経由して岐阜へ帰る、という話。  岐路の途中でサブローは何者かに狙撃されたけど、部下のリアクションの描き方から見ると犯人は本当の信長である明智なのかな? この作品のこういう悪意や心理の描き方が好きだな。

  • 『ひとかどのまちかど』 (読切)高校生の女の子が、勇気を出して異星人の集まる喫茶店へバイトの面接へ行くと、そこはクラスメイトの男の子も働いていて、一緒にアルバイトをして過ごすことでその男の子の事が気になり出す、という話。 『とある飛空士への追憶』の作画を担当した小川麻衣子の短編。

    主人公の女の子は早とちりしたり色々考えたりはするのだけど、全てがこ女の子の望むように話が進んでいて、何かを乗り越えて成長したって感じがしないなあ。 男の子が物わかり良すぎるから、主人公と全く対立しないし、主人公が困る方向へは話が一切進まない。 そこが読んでいて引っかかったかな。 あと、この女の子の台詞や、モノローグの言葉やリアクションが多すぎて少し煩わしいと思った。 話自体はまとまっていたと思うけど詰め込みすぎだったかも。


  • 『アオイホノオ』 (40話)ホノオが編集者に嘘を付いたことがきっかけで、自分独自の女性キャラを作ろうともがいていた一方、矢野健太郎はホノオが描こうと思っていたジャンルをあっさり雑誌で発表し始めるのだった、という話。  この作品は、ホノオ達が実在の漫画家の名前を叫んで理不尽な文句を言うってパターンが延々くり返されているわけだけれども、それがどんどん薄味で無理に叫ばせてるような印象になっている。 ホノオがメインになると、主人公を丁寧に描くつもりなのか、話が引き伸ばされた感じになるなあ。

  • 『まねこい』 (55、46話)ホンチーが音痴なのを本人に言う勇気がないので、ハルが自分でわざと風邪を引き、それを移すことで、ホンチーのカラオケ大会出場を阻止しようとする話と、歴史研究会の営む喫茶店へやってきたカップルの女の子の椛が楓と双子なのが発覚して、椛の事が好きだった荒場木や、カップルの男の方にナンパされた沖田達の間で今後波乱がありそうな話。

    脇役の話を広げようとしてるし、歴史研究会を中心に話を進めるようにした時点で群像劇にしたかったのだろうなと今更思った。 でも、登場人物達の誰にも興味が持てない。 前はもっと主人公のハルに興味が持ててたのかさえ記憶にない。 

    荒場木の恋愛話は苦い過去がありそうな分ハルとホンチー、奈波の三角関係よりは面白みがありそうだけど、荒場木自体魅力があるキャラクターなわけでもないので面白く感じられるのかどうか。 ってかカップルの男の方と荒場木は顔の傾向が似てるから、椛は似たタイプが好きって事なんだな。 椛に喫茶店のチラシを渡した山崎は、椛を見て何かに気づいてたけど、これは単に楓に似てるって思っただけかな。


  • 『バレてるよ!ジャンボリーヌ』 (16話)城之内の妹争奪戦の続き。 他の参加者と別行動を取った中嶋は、手を舐めることで嘘を見破る生き物の質問に答えさせられるのだった、という話。  台詞で笑わそうとしいてるけど、絵が笑いに貢献出来てない事が多いと思う。 それにしても、風雲たけし城をつまらなくしたような展開が長すぎる。

  • 『アサギロ』 (28話)次こそ沖田に勝つべく試衛館に通い稽古を続けた永倉は、いつの間にか道場に馴染みだし、盟友の宇八と袂を分かつことになった。 一方同じく道場へ来ては沖田に再戦を拒否されあしらわれている、北辰一刀流伊東道場の藤堂平助は、藤堂を疎ましく思う伊東大蔵から、厄介払いに間者として試衛館へ潜入せよとの命を受けるのだった。  藤堂と藤堂を軽んじる伊東夫妻の関係の描き方とか好きだなあ。

  • 『サボテンの花』 (読切)瀬戸ミクモの短編。 思いを寄せていた学校の教師が結婚したのを知った内気そうな女の子が、先生へサボテンを送る、という話。 

    本当にそのまんまの話で、サボテンを送るってのは一種の告白なんだけど、話が落ちてないっていうか、淡い恋心の話だから主人公はそんなはっきりと先生との恋愛を意識してないだろうけど、それでもその少女が先生に対する思いをを諦めたかどうかみたいな、先生の結婚に対してどうしたいかという意志がサボテンを送る以外に描かれないと話として収まりようがないのではないだろうか。 主人公のキャラも含めて全部が曖昧すぎるように思えた。 そもそも主人公が内気ってことしか分からないし。 サボテンを送った後の女の子の表情が見れた方が良かったかも。

    あと、学校の先生がサボテンの花言葉を言うシーンがあるなら、花屋の店員が花言葉を教えるシーンは重複するしいらないのではないだろうか。  なんていうか、主人公がただの脇役になっている作品だった。


  • 『妹先生 渚』 (12話)クラスになじめていない光路郎の息子が、助けたスズメと渚に影響を受けつついじめを乗り越える話。 32ページ。  スズメを擬人化して小さい妖精のように描いていたので、少し戸惑ってしまった。 少し検索したら、前作の『光路郎』にもそういう表現があるとの事。 最終的に光路郎の息子がいじめっ子達を助けて仲直りって展開で、よくある話ではあるけど、渚を脇に回して光路郎の子供二人を中心にした方が、漫画として面白くなりそうと思った。

  • 『ちろり』 (3話) 夏になり、薄物を着て店に出ることになったちろりが、自分が薄物を着ていることに戸惑いながら給仕をする、という話。

    ちろりやマダムを中心として、表情の変化を逐次丁寧に描いてるのは分かるし、ちろりを魅力的に描こうとしていることは、薄物を着ているマダムや、自分が着ることになる薄物を見ている時のリアクションの描き方で分かるのだけど、でもやはり、日常のささいな出来事や物の描写が大味というか、細部を丹念に見る事で何かを発見するような魅力のある書き込みではないのだよな。 たとえばマダムの首筋や胸元のアップを描いたコマとか。 人物にも着物にも、あっさり描いた以上のものを感じられないのが描写としてもったいない。 ちろりの表情のめまぐるしい変化も、ちろりを繊細に見せているというよりは、リミテッドアニメのドタバタした感じに近いように思える。

    着物なり、アンティークな家具なりの描写に執着が感じられないと、こういう懐古調の雰囲気を楽しむ作品は面白みが出ないように思う。 ちろりやマダムを曲線的に描こうという執着心はあるようだけども。

    あと、今回は最大の問題点があって、それは、今後も出てきそうな資産家?の青年が、ちろりを見初めるという描写があるのだけれども、ちろりがマダムとやり取りをしつつ薄物に一喜一憂した時の絵と比べて、その時のちろりが可愛らしく見えない、とう事だ。 特にテーブルに水を出す姿や恥じらうちろりの顔のアップには、青年に恋心を抱かせるような魅力には乏しいように思えた。

    マダムとちろりの女同士のやり取りを楽しそうに描いて、ボーイミーツガールをいまいちノって描けてないような感じは、作者の資質なのか今回たまたまかは知らないけど、今後変わってくるのだろうか。


  • 『リンドバーグ』 (28話)エスペランサの愛人であるマティアスが、シャークに決闘を申し込む、という話。  ありがちな登場人物のリアクションや展開だったけど、話がシンプルで分かりやすく面白くはあった。 特にロズリンの言葉遣いや海賊とのやり取りなど。 それにしても面白い回はやはりニットが空気だなあ。

  • 『第三世界の長井』 (25話)ラーメン丼を持った女と長井の戦いの続き。 7ページ。

    帽子の男が色々独白していたが、この男の役目は、因果律の崩壊によって現れた超常現象を, 世間の目から隠す事らしい。 人間も大量に殺しているとのことだが、21話で帽子の男は自分を神と名乗っているので、神的な立場として、寿命を終わらせるように殺していたということだろうか。 その神というのが比喩なのかよく分からないけれども、1話から読み返すと何か分かるかも知れないが面倒過ぎるのでしない。

    帽子の男は神的な形而上の立場を降りた事で、形而下での、その後興味本位で観察していた長井の物語に巻き込まれている、というのが、帽子の男を中心にした場合のこの作品の大まかな筋だと思うけど、長井が新しい神になって終わりみたいになりそうな気がする。

    あと、24話の感想で、長井の手足に麺が刺さるのが残酷と描いたけれども、22話で博士が長井に、ラーメン星人との戦闘で手足の一本は覚悟しろと、伏線的に語っていたのだな。気になることがあってゲッサンを読み返して気づいたのだった。


  • 『月の蛇』 (28話)禁軍・節度使と、梁山泊が全面的に戦う事になった一方で、飛虎は、林冲に負けた時のショックで戦意喪失していた。 そんな飛虎の前に昔の知り合いである玲綺が現れ、同時に、飛虎の師匠である王進も東京に潜んでいたのが発覚するのだった、という話。  飛虎がさらに強くなり復活するための下準備と、翠華と飛虎の関係を進めるための女性キャラの投入といった感じの回。

  • 『イボンヌと遊ぼう!』 (29話)イボンヌが何かを胸に秘めたままはじめを夜の散歩に誘う話。  普通に考えてイボンヌが教師を辞めるか転任するのだろうけど、前に予想した通り、最終回は大学で再会しそうな気がする。

  • 『エースの秘密』 (読切)超能力を使った変化球で試合に勝ち続けていた野球部のエースが、幼なじみのマネージャーを助けるために超能力を使いすぎて試合で使えなくなってしまう、という話。

    『信長協奏曲』の作者の読み切りで、主人公のピッチャーが飄々としていて図々しい所など、『信長協奏曲』のサブローに近いものがあった。 前に読んだ吸血鬼の短編に比べたら遙かに面白いけど、主人公よりもマネージャーや、その友人の女の子の方が目立って印象に残ったのと、マネージャーが一応ヒロインであるはずなのに、いまいち可愛く見えないのが気になった。

    あと、マネージャーが道路で転んでトラックに轢かれかけるのだけど、歩道を歩いていたはずなのに横断防止策(防護柵)?を挟んだ向こうの道路で転んだのなら歩道から柵をまたぐなりして道路を横切ろうとするコマが必要なわけで、そういうコマがないから急に道路にワープして転んだ感じになってて不自然だった。

    こういう現代物の画を見ると、小山ゆうよりも伊藤潤二に似てるなと思った。



「ゲッサンしてみる。」はツール・ド・本屋さん。 この企画は「ゲッサンしてみる。」とは別に連載でやればいいのにわざわざ"ゲッサン読者ページ"と銘打ってるコーナーでページ増までしてやる意味って、読者からのおたよりをチェックしてページを編集するのが面倒だからなだけじゃないのだろうか。 この漫画のどこが読者ページなのか。

『ゲッサン編集部こぼれ話」によると、次号から大攻勢をかけ、この半年で多くの作家の作品が参戦や戦線復帰するとのこと。 正直、いい加減購読し続けるのがしんどい誌面状態なので、マシになってくれるといいなと思う。

この号は感想を書くのを長期間にわたって何度も中断したせいで、連載作品を改めて全部何度も読み返すことになってしまった。 何度も再読して新鮮味が薄れたせいか、初読時に何か書きたいことが沸き上がった作品も、再読して何も感じなかったり、何を書きたかったか全く思い出せなくなったりして、感想を書くのに凄く困った。

もちろん、再読して新たに気づくことや書きたいことを思いつく事もあるけど、割合で言えば特に何も感じずに再読し終えることが圧倒的に多かった。 当たり前かも知れないけど、感想は、対象に興味や集中力のあるうちに書いておくべきだなと思った。

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