2011年8月30日火曜日

ゲッサン23号(2011年04月号)

  • 『QあんどA』 (23話)肝試しでの陣野の悪巧みは失敗し、安藤弟は崖から遊歩に助けられ、遊歩はアルバムで自分を本当に助けた人物が誰なのか知る、という話。  小さい頃、海で溺れた自分を助けたのは安藤兄だけじゃない、と遊歩が知る経緯をあっさり描いているけど、いつものあだちと違って独特のほんわかした暖かみみたいなものが無かったように思った。

  • 『ハレルヤオーバードライブ!』 (23話)ハルが、自分の大切な曲が奪われたいきさつを小雨に話し、小雨はその曲を奪い返す事を決意する、という話。  ハルの独白は良かったけど、小雨はまだそれを受けて立てる人物になれてないと思う。 主人公で音楽の才能があるって事で下駄履かされてるけど、それでもまだ受け止められる器がないように思えるのだよな。 ただ、ハルの曲を浅緋が奪ったというエピソードは思っていたよりちゃんと深刻な話に描かれていて、冬夜も知らずに兄に荷担してしまったとして上手く過去話に絡んでいたし、歌詞がハルの父への思いが込められていたものだったりとか、『希望』という曲のエピソード自体は良くできているなあと思た。 あと愛葉のセリフっていつもつまらないなと思った。

  • 『Waltz』 (18話)蝉が人殺しと殺し屋の違いを自覚しつつ、他方で殺し屋達を殺し回っていたのは首折り男に扮したチクタクの人間だった事が発覚する回。  いやあ苺原が殺してたと思ってたんで完全に騙されたな。 さすがに苺原は簡単に人を殺せる側の人間にはなれないか。

    で、岩西に首折り男を殺す依頼をしたのがコンビニの店長って話は記憶にないのでゲッサンのバックナンバーを漁ったら、3話目に出てきた話なのだな。 その時既に依頼者のコンビニの店長を岩西は怪しんでいたのだけど、さすがに1年半前のこの伏線は、何度も読み返していないし覚えていなかった。 それにしても過去の自分を思い出して恥ずかしがる蝉の頬を赤らめる描写はいらないと思った。

  • 『ここが噂のエル・パラシオ』 (23話)桜花がイズミと戦おうとしない理由は気持ちの問題だった、という話。  隠された因縁じゃなく心の問題かよ! と思ったらショー抜きの本気の喧嘩になってしまうから戦おうとしなかったというちょっとひねった落ちな所は良かった。 しかし何度も何度も書いているけど忠輔の記憶喪失はいつ解決するのだろうか。

  • 『ぼくらのカプトン』 (37話~39話)春休み前、春休み中、新学年、の時期の無駄話。  3話とも男の馬鹿っぽさを出そうとして失敗した感じ。 37話の太った男子生徒の胸を揉むのは気持ち悪いレベルになってるし、パンチラを目撃する39話は話が落ちてないし面白くもなかった。

  • 『FULL SWING』 (11話)名の知れない引っ越し屋に就職した女の子が自分の境遇を卑下し、そこから前向きに考え直す話。  青森=リンゴっていう安易さなどが所々あったけど、今回は話がそれなりに上手くまとまっていたと思う。 それぞれの場所で幸せに生きている人がいるって感じが出ているのが良かった。

  • 『まねこい』 (45、46話)砂浜で出会った怪しい4人組に歴史研究会の女の子達が連れ去られてしまう話。  4人組の威圧感や怖さが上手く出ていてハラハラさせる展開なのは面白かったけど、ハル達のピンチに猫太郎とリアが安易に都合良く使われて、何でもあり化してるように思えて残念。 トラブルは歴史研究会達の力だけで乗り越えて欲しかったなあ。

  • 『リンドバーグ』 (23話)プラモが突然大きな翼を生やして光り出すと、光を浴びたリンドバーグ達はなぜか闘争心を失い大人しくなり、ニット達は難を逃れるのだった、という話。  目のゴーグルみたいのもそうだし、今回プラモの体が光ったのも動物離れし過ぎて違和感がある。 今回ニットの父親らしき仮面の男が初登場。 光に弱いらしく、杖をついてシューという異音もたえず描かれていた事から、何らかの事故で記憶か人格に障害が起きているか機械化されて洗脳されてるのかなと予想。  エスペランサの拷問の結果だったりして。

  • 『よしとおさま!』 (23話)サビ丸が綿貫のお庭番である百舌と一緒に料理を作るような話。  百舌が珍しく表紙や若い頃のシーンで女っぽく描かれていたが作者がペン入れしたのだろうか。 特に表紙の体のラインはいつになく女性的だ。 よしとおを芯に話が作れないから回りを動かしてるって感じがしなくもない回ではあった。

  • 『バレてるよ!ジャンボリーヌ』 (10、11話)城ノ内とその父親の喧嘩に中嶋が巻き込まれる話と、雨で濡れた城ノ内は頭が重くなって這うことしかできなくなり、中嶋に助けを求める話。   10話は前半の城ノ内と父親のやり取りのセリフはそれなりに面白かったけど、それ以外は相変わらずいまいち。 11話は面白くはなかったけどひたすら地面を這ったり転がったりしてるだけなのがくだらな過ぎて嫌いではないなあ。 でもカラーページの単行本宣伝漫画の方がまだ面白いしのびのびしてたかも。

  • 『アオイホノオ』 (35話)コタツでトンコさんとしゃべりながら、大友克洋や高橋留美子をちょっとムキに批判したりする回。  その時代の漫画やアニメの動向を描くのに時間を割いてホノオ自身の物語がおざなりなままって感じ。 まあホノオが話の中心になっても現状では面白くならなそうではあるけど、それは、ゆでたまごを比喩に使ったりしてホノオの内面を説明してはしてるけれども、ホノオの空回りする情念や焦燥感がいまいち描き切れていなくて、そのことが主人公としての弱さになっているからではないかと思う。 テニスか何かの部活の練習などをやっていた頃はまだホノオの血肉を感じられた気がする。 あと、大コマや見開きで漫画家を腐すパターンはいい加減飽きてるし、腐す言葉が全然上手いこと言えてないから余計に面白く感じられない負の連鎖になっていると思う。

  • 『アサギロ』 (23話)視点が変わって永倉新八と市川宇八郎が中心になり、今回は永倉が浪人?を斬ったり女を買ったりする話。  2人の侍の性格の違いが出てて面白かった。 ネットで検索したら、実在の2人は親友同士だったらしい。

  • 『マコトの王者』 (23話) 天堂の中に入った大地マコトはジョーンズに判定で何とか勝って家族やファンに感謝をし、大地の中に入った天堂マコトは心を作ると称して、周りの人間から距離を置き傲慢に振る舞う、という話。  天堂は周りの人間に冷たく接して嫌われないと自分を厳しく追い込む事が出来ない性格な気がする。 やっと2人のマコトが再び戦うことになったわけだけど、いまいち話として盛り上がっていないような気がする。 自分がこの作品に飽きてきただけなのかな。

  • 『イボンヌと遊ぼう!』 (24話) マコ姉がマコとすれ違い続ける話。  前回と続けて、しかも安っぽくマコ姉が出てくるとは思わなかった。 マコ姉が卓球や生け花などをやるのだけれど、変な衣装も含めて面白さが分からなかった。 最終的にお涙頂的な終わり方になってたけど、過程が楽しめなかったのでその流れでマコの悲しい気持ちもピンと来なかった。

  • 『ドナー&レシピエント』 (読切)事故で肝臓移植を受けた小説家が、その肝臓の記憶を受け継いで、元の肝臓の持ち主の死の真相を調べたり願いを聞く話。  交通事故に遭って退院後数日で全力で走るのは、主人公が臓器移植手術をしたばかりである事や足にギプスをしている設定を無視し過ぎな展開だと思う。

    あと、殺された陸上選手の死亡をすぐ公表しなかったり、死体発見場所の公表が作中のメディアでされてないようなのは、マフィア絡みの事件だし陸上?協会がバレたら困る事があるから、というのは予想として分かるけど、じゃあ臓器はいつ移植したのかとか、死の公表よりも移植が先になってる事とか、時系列がハッキリしないので、選手の臓器が遺体発見当時に移植できる状態だったかみたいな部分が曖昧にされてるのも引っかかった。

    ひねった設定を作ったのならそれにリアリティを持たせる描写をもっと入れたらいいのにと思う。 あと、丸みを帯びた暖かい感じの絵柄で分かりづらくなっているけど、どこか人間が冷たい印象を感じた漫画だった。

  • 『オレとあいつの図書戦記』 (読切)図書館で青年と主婦が同じ本を奪い合う話。  この作品は設定に穴がありすぎると思う。 まずどうしても読みたければ借りれば良いのは落ちに使われなくともすぐ気づくし、普通図書館は朝の10時くらいから開館するけど、子連れの主婦が、朝から、青年がバイトの時間であるらしい昼の12時位まで毎日図書館に居るのはちょっと考えづらい。 青年のバイトの時間が日によってまちまちだとか、主婦が毎日図書館に通う理由が別にあるとか、そういう理由がないと設定に無理があるのでは。 あと、四角で囲んだ「諸君らに言っておく」や「戦争だ」などのナレーションは、別に無くても漫画が成立してるし余計だと思った。

  • 『第三世界の長井』 (21話)帽子の青年の正体が一応発覚する話。 でもそれが分かってもこの漫画の話が分かるようになるわけでもないのであった。

  • 『ハート ディスペンサー』 (読切)1人分買っても2つ飲料が出てしまう自販機を巡っての女の子同士の話。  故障した自販機の扱い方っていうか、自販機に対する妄想の仕方が面白かった。 510ページの風が吹いてる道を歩く女の子の後ろ姿とか独特の雰囲気が出てるし、絵はまだまだだけど所々味わいがあるって感じ。 ただ、セリフがこなれてないのか、なんかスムーズには読みづらかった。 言葉のチョイスなのかなあ。 次の作品にも期待が持てそうだけど、この作品は少年漫画なのか?といわれればよく分からない。

  • 『BULLET ARMORS』 (10話)前回現れた謎の男は、かつてあった人類と機械との戦争を再開させようとたくらむブリーダーで、セレナはその武装集団から逃げてきたのだった、という話。  やっとイオンがちゃんとセレナを助けて少年漫画っぽくなってきた。 ベタな展開ではあるけど、この作品で1話全体がちゃんと盛り上がったのは初めてかも知れない。 

    ブリーダーが壊し屋に嫌われているのは、ブリーダーが人類と機械との戦争で、機械の側に立って人間を攻撃したからのようだ。 もう期待していなかっただけに意外に面白くて良かったな。 あと、この謎の男の片腕のトレマは、バレットの片腕ではないようだ。

  • 『人間抑止力 獅子丸』 (読切)特に取り得の無いような少年に特殊な超能力がある事が発覚して、その少年が国家機関に連れて行かれてからの悲喜こもごもな話。  目新しさのない設定ををありがちに展開させたような漫画という印象。 この作者の前に掲載された短編と同じく、絵はこなれているんだけども、読んでいて新鮮味や興味を惹く引っかかりがないというか。

    なんていうか、登場人物達が、大した魅力も人気もないのに面白くて人気者であるかのように振る舞っているタレントを見ているような違和感を感じた。 面白い漫画風に描かれてるけど特に面白いわけでもない漫画って事になるのかな。 色々面白くしようとしたりちょっと良い話に持って行こうとしてるけど、演出も上手く行ってないと思う。 

    そもそもが、人間抑止力という能力が機密事項なら、国の人間が他の生徒達や教師にそれと分かるように少年を連れて行ったのはおかしいし、父親が少年を刺そうとしたのを母親がかばって死んだ事に対して、母親がかばった事以外の、少年の父親に対する愛憎が全く描かれないのも、少年の良心を描くなら避けるべきじゃなかったと思うし、母親が刺される夢を見てる時の少年の寝顔が笑顔なのも、前向きな少年という演出だとしても異常だと思う。 リアリティとユーモアの線引きが上手く行ってないのではないだろうか。

    たとえば、少年が国の人間にあっさり連れていかれていたけれども、その少年が今は一人暮らしなのか施設なのか、親代わりが居るのかとか、そういう背景が分からないまま平気で知らない所に連れてかれて気にしてないのがリアリティとして違和感を感じたし。 そういう、少年がモラルを語る時の説得力になる背景が足りてないかも知れない。

  • 『いつおまえとジルバを』 (32話)野良猫仲間が、野良猫の里親捜しをする連中に連れて行かれてしまう話。  今回は1話で完結してなくて次回へ続くのだけど、逃げ回ってるという、ボスになったマリーを絵で見たかったな。 次回はジルバが株を上げてやっぱりボスはジルバだ的な展開になるんだろうか。 なんとなくもうすぐ終わりそうな気がしてきたが、この作品の、人間の女性に恋する猫という設定は別にいらなかったよなと改めて思う。 

  • 『月の蛇』 (23話)翠華の許婚の妹は、かつて梁山泊と戦って死んだと思われていた人物で、その女は翠華を連れ去り、翠華を一足遅れて助けに来た飛虎と青磁の前には梁山泊の李逵が現れたのだった、という話。  李逵と飛虎が戦うと思っていたら、青磁が戦い飛虎が翠華を追いかける展開になってしまった。 翠華の村を潰した男なので青磁と因縁もあるから分からなくもないけど、青磁の方が翠華に早く追いつきそうな気がしたので。

  • 『信長協奏曲』 (23話)将軍義明が、信長に謀反を促すような密書を各地の大名へ送っているのをサブロー扮する信長が知ったり、サブローと初対面した松永久秀が、現代からタイムスリップして来たヤクザだというのが発覚したりする話。  信長の周辺で色んな思惑がひしめいてるな、というような内容だったけれども、今回のサブローはただの話の聞き役って感じだった。 普通の高校生だったサブローが戦国時代に来て、やがて戦で人を殺すようにもなるという部分を曖昧にしてきた事のツケが終盤に来そうな気もするけど大丈夫なのだろうか。


今月は『妹先生 渚』が休載していたけど、過去の人気作品の続き物ということが話を作りづらい理由になっているのだろうか。 人気作品のキャラクターを汚さないように出すのは難しいのかも知れない。

で、今月号は新人の読み切りが4作品載っていて、ルーキー掲示板のページには、「今月号はいつもよりページに余裕がある」と書いてあったけど、それは『妹先生 渚』の休載が早めに分かっていただけなのでは?と思った。 先月号の巻末コメントに、『渚』の漫画家が剣道部の取材先を探してる旨のコメントを書いていたけれども、取材が足りていないのも休載の多い理由なのだろうか。 というか1話目に剣道を描いているし、剣道の取材するのが遅すぎるような。

そういえば前まで何本も掲載されていた、新人の瀬戸ミクモの作品が最近載ってないなと思って少し検索したら、7月にカプトンの漫画家の所へ来たようななツィートがあったので、アシスタントをして漫画の修業を積んでいるのだろうか。

今回の「仕事場見たいし!」は『ぼくらのカプトン』のあずまよしお。 相変わらず漫画家の、漫画家としての背景を探るようなレポ漫画ではなかった。 そして、10号(2010年03月号)以来久々に「ちょっと腹ごしらえ。」のコーナーが掲載されていて、この第2回目は『よしとおさま!』の四位晴果が「ちっさいシフォンケーキ」のレシピを紹介していた。 細かい説明もあるかなりちゃんとしたレシピだった。 あとは、ゲッサン連載陣の出身地別データが小さく掲載されていた。

しかしこの号のあだち充の表紙はいいなあ。


ゲッサンの感想を書いてる内に、後から読むと訳が分からないからその回の大まかな粗筋も書くようにしたのだけれども、たいがいかなり雑にまとめているので、後で粗筋を読んでもよく分からなくて当初の目的を果たしてないなと思たりする。 でも粗筋をまとめた時にその粗筋から小さなエピソードが幾つも漏れてしまうのはちょっと好きだ。 粗筋も間違ってはいないけど、実際に作品を読むと全然印象が違いそうな感じが良い。 話の筋をちゃんと知りたい場合にはこういう雑な粗筋は不適切だろうけど、まとめ方で色んな粗筋になるのが面白い。

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