2010年7月26日月曜日

ゲッサン13号(2010年06月号)

この号の表紙はゲッサン連載漫画キャラの集合画像。 こういうのは、いかにも少年誌って感じがして好きだ。 編集長代理も「こぼれ話で」大好きって言ってたけど、確かにお祭り感覚があって良いと思う。 昔はサンデーやジャンプとか、正月号などでやったりしてたっけ。

  • 『FULL SWING』(1話) 新人のマツセダイチとベテラン原作者の武論尊が組んだ新連載の1話目。 話の進みが早いと思ったら完結してびっくりしたけど、1話完結物のようだ。 話自体は古い時代の不良の話で、荒れた生活をしていた少年が、自分が癌になったのをきっかけに、友人の助けを借りながら立ち直っていく的な話なんだけど、原作の古い世界感を上手く現代に翻訳しきれてなかったかなあ?という感じがした。 マツセダイチの絵は読み切りではもう少しシャープな印象があった気がするけど、今回はかなり泥臭い昔風な絵柄な感じがしたし。 演出的にはもうちょっと登場人物の心の機微を感じさせる間が欲しい気がした。 

    主人公が、喧嘩をふっかけてきたグループの女をレイプ?するっていう展開が、今のゲッサン、というか少年誌の空気に合ってるか疑問だけど、全体的に大人しめな空気のゲッサンに対して原作者の武論尊が一話目でわざとふっかけてきたのかなあという妄想もしたりして。 こういう劇画の影響を受けたような大味なテイストの漫画は、 今時の、面白ければ何でも良い的な中性化した男性向け漫画雑誌に対して、少年漫画のジャンル性の再興という意味では1つの方法ではあるのかな。 これが単純に懐古趣味で終わってしまうかは何とも言えないけど。 
  • 『とある飛空士への追憶』 (9話)シャルルと母親がファナと幼い頃に会っていたという事が語られる話。 長めの台詞や独白が、吹き出しにひとかたまりで纏められてる事が多くてちょっと読みづらかったかなあ。 もう少し吹き出しを細かく分けた方が読みやすかったかも。 ファナが嫁ぐ皇子への嫉妬をシャルルが自覚してつづく、になるんだけど、ファナと皇子の事を想像して眠れない時のシャルルがコミカルにデフォルメされていたので、自分的にはもうちょっとシリアスに描いてくれた方が焦燥感が出て良かったのにと思えた。 原作もこういうノリなのかも知れないけど。
  • 『まねこい』 (25、26話)ハルがホンチーの悩みに対して、独り一喜一憂したものの、最終的に本人から直接悩みを聞いて、休みの部員旅行にホンチーも行けるように部員みんなで考えよう、と決める話。 2話ともハルがやたらテンションが高くて、漫画自体も勢いとノリだけで一気に描いたような落ち着きのない内容だった。 ハルがやたらテンションの高い回は面白くない気がする。 今回もコマ毎にハルの表情がころころ変わりすぎて騒がしかった。 ハルの落ち込みもかなり軽くて印象に残らなかったし、この漫画はどんどんいまいちになっていってる気がする。
  • 『ここが噂のエル・パラシオ』 (13話)桜花とカーペンターの試合と、その試合の過程でレフェリーを真面目にやってみようと思う忠輔、の話。 試合運びを順番に描いてるだけのような説明的なコマ運びで、試合運びが分かりやすくはあったけど、試合自体は特に面白いわけでもなく中途で終了してしまったのが物足りなかった。 この漫画の試合はハラハラしないのが問題だと思う。 あと、忠輔が心を動かされた、万里子の「バカなのよ…レスラーは。 観客がいれば… どんなことでも耐えられるし…(略)」という言葉をいうけど、忠輔がなぜ動かされたのかピンと来なかった。 今後は忠輔が真面目にレフェリーになろうとした途端、記憶喪失前の関係者が登場とか記憶が甦るとか、そういうパターンになったりして。
  • 『QあんどA』(13話)大筋としては、大内忍の活躍によって庵堂弟の周辺の関係性が変わってきたのと、庵堂兄が、回りの人を助けるのをためらうようになる話。 物語が大きく動くまえの下準備の続きみたいなエピソードだったけど、楽屋落ち的なネタも今回はソフトで、とてもあだち充的な繊細な人間関係の連鎖が描かれていて面白かった。 毎回こんな感じなら良いのに。 新キャラの脇役も出てきたけど、遊歩以外はみんな自己紹介が付いていて、まるで漫画を仕切り直したような回だった。 案外コミックスではこの回は巻の最初の話になるから自己紹介させてるだけなのかな?
  • 『アオイホノオ』 (25話)ホノオが、自分の夢を実現する努力をせずに、バイトもせずウォークマンを買う目標を立てたり、同じ大学の人が漫画雑誌で新人賞を獲った事に焦燥感を感じたりした回。 今回はトンコさんのちょっとした独白が出てきたけど、今までトンコさんの内面表現って描いたことあったっけかなあ。 トンコさんは、本人の口にした台詞以外での内面を描かないようにしてると思っていたのでちょっと違和感があった。 ホノオが車の免許を取るようなのでまだ大学外の話になりそう。
  • 『Waltz』 (8話)前回、岩西の事務所が爆発して終わったけど、今回は岩西と蝉が協力してとりあえず2人の追っ手は殺したっていう話。 岩西と蝉が、自分達が死んだと見せかけるトリックを使うのだけど、室内は爆煙で視界が悪いのだから、敵は扉からしか来ないのも分かっているし、銃で狙い撃てば良かったのではと思った。 しかし相変わらず蝉のリアクションがBLくさくて苦手だ。 死にかけてた長髪の男が消えたけど、もしかして首折り男って、首折り男を捜してた男が本人? だとしたらかなり意外でやられたって感じがする。
  • 『マコトの王者』 (13話)アメリカへ試合に出発する大地の中に入った天堂が、大地の妹たちとの関係がさらに悪化して、天堂の中に入った大地の方は、持ち前の人なつっこさで天堂の父親と仲良くすると思いきや決裂したり、トレーナーに、自分が前の試合で全然動けなかった理由を教わりつつ、ボクシング練習とアルバイトを始める話。 大地の妹を蔑ろにする天堂マコトにはストレスを感じるけど、これで試合に勝ってしまったらさらに傲慢なままになるだろうし、こじれた妹との関係にどう決着を付けるかが気になる。 まあこの不和が、マコトの中身が入れ替わってる事を妹達に知られるきっかけになるだけかも知れないけども。 でもお金を稼くだけでは大地の若く健康な体に入って戦う事の贖罪にはならないように思うのだよな。 家族やジムのみんなも含めて大地のように背負う事を受け入れることが、大地の体を貰った責任を果たすことになるように思う。 あと、前も書いたけど男のトレーナーが男に対して頬を赤らめるのが受け狙いなのか知らないけど良いとは思えない。 
  • 『イボンヌと遊ぼう!』(14話)女の子のレギュラーキャラがみんなで四つ葉を探していて、その際中に池から飛び出した鯉を助けたりする話。 四つ葉の生え方が変だと思うし、人面茸も面白みを感じなかったけど全体的にほのぼのしてて嫌いじゃなかった。 イボンヌはしゃべらないので、結局この漫画はイボンヌのリアクションをどう魅力的に見せるかだよなあ。 ふと思ったけど最終話はイボンヌが喋って終わりそう。
  • 『ハレルヤオーバードライブ!』 (12話)バンド合宿をして、小雨とハルが恋愛的にちょっと接近した話。 今回は妙に擬音などの手書き文字が多かった気がするけど、、あまり効果的じゃない気がした。 っていうかちょっとした独り言の文字が妙に太かったと思う。 あと半透明にした吹き出しの文字が見づらいと思ったし、そもそも内面の言葉じゃない台詞を吹き出しを丸くして使っているで、今更だけど、吹き出しが心の声なのか分かりづらいと思う。 それと、小雨とハルがイチャイチャしてるのを麗が見てたけど、その顔がいまいち嫉妬してるようには見えなかった。 その他印象に残った事はというと、ハルは可愛く描けてたし、愛葉の大きな胸は、初めて効果的にアピールできてたと思う。
  • 『忍びの国』 (13話)伊賀攻めで天膳が大活躍し、無門が妻の気を引くために伊賀に戻ると決める回。 久しぶりに無理矢理テンション上げてるような絵柄だった。 迫力を出そうとした絵がちょっと分かりづらくて演出が空回りしてるように思う。 もうちょっと戦が怖く感じられるようだったら良かったのに。 伊賀のナマズみたいな偉い人はコミカルに見えるし。
  • 『ぼくらのカプトン』 (7~9話)今回はどれもいまいち。 7話の朝練に人が来なくなるエピソードのオチは同級生のフォローに問題があったからなはずだけど、そこが先輩好きな後輩が来続けてるせいで曖昧になってしまいオチてないと思った。
  • 『月の蛇』 (13話)前回、飛虎を倒そうと旅だった梁山泊の男達は、その上の頭目に止められるし、飛虎と武松の闘いも武松が引いて中断っていう肩すかしな展開に。 ちょっとガッカリ。 次回は蛇矛の飛虎の過去話。
  • 『よしとおさま!』 (13話)よしとおが、母違いの妹との出会いを機に今まで住んでいた家を出るのだけど、結局は前に住んでたアパートの大家に諭され戻ってくるという話。 全く納得がいかなかった。 よしとおが家を出たのは理屈があって出たわけじゃないのに、理屈を言われて返ってくるのにまず違和感があったし、男の鬱屈した感情を泣いて多少気が晴れるみたいな展開に持って行ったのも違和感があったし、よしとおは正妻の子ではないことで負い目を感じるのに父親に幻想を抱いて、とか大家さんにいわれても、良い幻想じゃなく幻滅してるから反発してると思うんだけどなあ。 そもそも住み込みでパン屋で働き出した事は別に問題はないわけで、大家さんやサビ丸のやってることっていうのは、よしとおの気持ちを無視して自立を阻害してるようにしか思えなかった。 父親に今まで出してもらった資金をすぐに返すのは無理があるだろうけど、返すためにバイトしたっていいじゃないか。 素直になれないよしとお、みたいな話にしたつもりかも知れないけど、よしとおは自分の境遇を素直に受け取ったら心が壊れるかもっと生活が荒れてもおかしくないと思う。 作者は自分で作ったよしとおの重い設定を軽く考えすぎていないだろうか。
  • 『アサギロ』 (13話)山南と近藤勇の試合。 自分が試合してるというのに山南の解説力は最大限に発揮され、自分の試合内容を解説しつつ自分が剣に探し求めているものを独白していた。 その間に沖田の近藤との出会いが回想されたのも構成として面白かった。 試合後、山南が土下座して負けを認めた時の近藤の表情が、山南を何とも思ってないような、山南の言ってる事にピンときてないような表情だったのが妙な印象として残ったのも良かった。 ただ、山南が最後に打ち込む姿とか、ちょっと絵が綺麗すぎて迫力が物足りなかったのが残念だった。 
  • 『僕らを染めたバーミリオン』 (読切)話は、彼女の上京が決まり別れることになった若い恋人達っていうありがちな話なんだけども、主人公である少年の感じが良くて、恋人の女の子も可愛いし、漫画自体、読み切りの短編なのに数話続いた後の最終話のような、妙に味わい深い短編だった。 ただ女教師が、車を運転したり少年の背中を押してくれたりと活躍はしてるキャラなんだけども、ちょっと作品のムードを壊してるような所があった気がする。 でも良い読後感でこの作者のもっと長めの話を読みたいと思った。 多分吹き出しの配置と台詞の使い方が上手くて、それが良い雰囲気を出してる理由の1つなんだと思う。
  • 『ドキドキの法則』 (読切)ゲッサンに何度か読み切りが載っている瀬戸ミクモの短編。 今回は、高校生?カップルが二人のドキドキを確認するという話で、相変わらず可も不可もいいづらい普通の話を作るなあと思った。 けど、彼女を驚かせるために、彼女めがけてボールを思い切り蹴った彼氏と、そのボールではなく「ドキドキした?」と聞く彼氏の表情にドキッとする彼女とのズレがちょっと面白かった。
  • 『レバー』 (読切)学級閉鎖状態になったクラスで、少年2人が給食で競い合ったのを機会に仲良くなる話。 どっちがたくさん食べられるかという意地の張り合いが、途中から情けの掛け合いになるんだけど、ルールも助け合いの仕方も大ざっぱなので何をもって正々堂々と勝ったことになるのかピンとこなかったし、結果として仲直りもぼんやりした印象になってしまい、ギャグにもシリアスにもなり損ねてるように思えた。
  • 『地獄の大魔王』 (読切)変な味わいのギャグ漫画を描く、かんばまゆこのゲッサン掲載3作目?くらいの短編読み切り。 友人宅で友達のゲームプレイを見ていたら、ゲームの中の敵が実際にその友人の部屋へ現れてしまうっていう話で、空想の世界が現実に介入するっていう設定はありがちなんだけど、そこからの展開がすごく変で、芸人のコントみたいなくり返しのギャグがありつつ面白かった。 最終的に誰が主人公なんだよっていう終わり方も良い。
  • 『お父さんといっしょ!』 (読切)前に載った短編は、『ファミリア』というヤクザのようなアンドロイドと少年の話で、今回は父親がトカゲの女の子の話。今回のはありがちな展開過ぎたのでは。
  • 『リンドバーグ』 (13話)レースが始まり、その裏でシャークが何か市民の噂話に聞き耳を立てたり情報収集してるって話。 ニットに目の前の目標も出来たしライバル件ヒロイン的なキャラも出てきたし、ストーリー展開的に盛り上がってはいるけど、ティルダが出てきたことで、ニットのライバル的存在だったルゥルゥが、脇役として大した役割も果たさないまま空気化しそうなのがもったいない気がした。 シャークの存在がティルダ側にバレた時に、ルゥルゥが思いがけずバレるきっかけになるとかそう言う役割はありそうだけども。 あと、ティルダとニットの勝負が、ニットが完走できれば勝ちってなってるけど、これが難しくない勝負に思えてしまうのでもっと緊張感っていうか不利な感じが欲しかったかなあ。
  • 『いつかおまえとジルバを』 (21話)マリーが自分を捨てた飼い主の家を見に行くというのでジルバも付いていく話。 結局は見ずに帰るんだけど、見て踏ん切り付けたりしても良かったんじゃないかなあ。 相変わらず人間が出てこない方が面白いと思うけど、なんていうか、今回新キャラの猫が出てきてジルバの出生の秘密ネタが発生したけど、そもそもこの漫画って、猫の顔や模様を描き分けてはいるものの、猫の体形がみんな一緒なので結局は見分けづらのが難点なんだよな。
  • 『あまとう!』 (読切)今回2本掲載された瀬戸ミクモの、短編じゃない方の読み切り。 空気を読まない転校生の男の子が、とある女の子の告白の邪魔ばかりするっていう話。 転校生の空気の読まなさが、たださわがしいだけのキャラになっててなんだかな。 女の子を振った男に対してビシッと言いはするけど、いまいち盛り上がらないし。 読み切りっていうより連載何話目かの投げっぱなしの回みたいな感じ。
  • 『第三世界の長井』 (12話)話数を見て気づいたけど、先月は休載してたんだな。 今回は6ページでいつもより少ないし、先月は原稿を落として今月も落としかけたってことなんだろうか。 相変わらず説明台詞も、言葉遣いも設定もどれもが読むのに面倒な漫画で疲れてしまう。
  • 『楽神王』 (13話)楽人を自分の手で殺したと思いショックを受けた弟の礼音が、士気の下がったルーチェ達に逆ギレしてる間、楽人は空間の狭間でアルモーニカから楽神について教えられ、弟を諫めようと決意する、っていう話なんだけど、主人公が、人命や国の危機なのに弟をしかってやらなきゃ駄目なんだ、っていう、戦争を兄弟間の問題として考えてる事にガッカリした。 主人公を弟と戦う気にさせる理由として安っぽいと思う。 あとルーチェ達と礼音のバトルが空回りしてるかなあ。 フェローが怒ったりと目立つ役割だけど、そのことでは得に盛り上がらないし、カルディネの隠してた事が、演奏者の命と引き替えに楽神を強くする楽譜だったんだけど、その命を賭けた戦いのシリアスさもいまいち伝わってこないし、盛り上がらなかった。 楽神の謎が少し解明されたし、話を締めにかかってるのかな。
  • 『信長協奏曲』 (13話)信長の美濃攻めが上手くいかないっていう話。 ナレーションでどういう状況かを解説したり、竹中半兵衛重治の行動も、なかなか面白い人物のようだけども、ナレーションでかなり片付けられてたり、今回も史実を漫画に上手く転換し消化出来てない感じがした。 史実の何処を省略してどこを引き伸ばすかなど、作者の構成も上手くいってないのでは。 残りの話数が決まっていて話を上手く各話に落とし込めてないのかなあ。

今月号の巻末にも、「ゲッサンしてみる。」の扉絵や「ちょっと腹ごしらえ。」のコーナーがなかったし、さらに「連載陣の、してみる日常。」もなかった。 扉絵は連載陣に負担がかかるので無しになったのだろうか。 正直「仕事場みたいし!」が増ページになるよりも扉絵や連載陣のちょっとしたコメントが読めた方が嬉しい。

ゲッサンと月スピの面白くない漫画の違いは何だろう、という事を前にも同じようなこと書いた気がするけど考えていて、それで思ったのは、月スピは押しの強い漫画が多くて、つまらなかった時にそれが鼻につくんじゃないかって事だった。 読んでる自分の好みの問題ももちろん多々あるだろうけど、そこが、月スピの面白くない漫画を読んだ時の方がイライラする理由なのかな。

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