2013年4月19日金曜日

ゲッサン31号(2011年12月号)

  • 『ハレルヤオーバードライブ!』 (31話)ハルは浅緋に奪れた曲よりも良い曲を作ろうと思うのだが、その方法が分からず、小雨の方は、なぜハルが曲を取り戻すのをやめて新しい曲を作ろうと思い立ったのか分からず悩むのだった、という話。

    結局、奪われた曲は、自分が父親を思う気持ちが詰まっているから気持ち良いのだとハルは気づいて、一方で、小雨は曲を奪われたハルの悲しい気持ちを忘れさせるために曲を作ることにするのだけど、ハルと小雨の気持ちの重なりとか、他の仲間の恋愛感情をあちこちで描いて、ラブコメ要素が強くなってきた。 今回はハルの思いを麗に丁寧に代弁させたり話運びが良かった。


  • 『よしとおさま!』 (31話)よしとおの命を賭けた熾烈な戦いの最中、サビ丸は黒彦の口から、自分が次の里長に選ばれていると知らされるのだった。

    闘っているシーンで、誰がサビ丸側の人間だったか自分が少し忘れてたというのもあるけど、分かりづらかった。 あと、敵側の人間が綿貫と友達になりたがるのだけど、男が男に対して感じる情の描き方が粘着的で相変わらず読んでいて気持ちの良いものではなかった。


  • 『Waltz』 (26話)苺原と首折り男は、ビル内でさらに入れ替わっていて、本物の首折り男が背後から蝉を狙ったのだが読まれて失敗し、蝉は戦いに有利な場所へ移動するために苺原を人質にするのだった。

    苺原自体はあまり魅力のある人物ではないので、苺原の身の危険は次回への話の引きとしては弱いと思った。 首折り男は結局苺原を自分の目的のために見捨てないんじゃないかなあという気もするし、苺原が自分の考えで蝉と闘うかなという気もする。 なんだが全員死亡ENDという気もしてきた。


  • 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』 (3話)車をアイドリングさせる事によって出る二酸化炭素が、地球の温暖化に影響を与えると知った時坂は、大型スーパーの駐車場の車を悉くアイドリングさせるのだった、という話。

    説明台詞は前回よりはマシだけど相変わらずやたら多い。 前回は不法投棄されたゴミがどんな危険物質を排出するかの説明回で、今回は車のアイドリングの説明回。 でも、言うまでもなく地球の環境が破壊されても人間にとって住みづらくなるわけで、未来が過度な環境保護のせいで住みづらくなっているとしても、現在の地球の環境を破壊し過すぎては意味がないわけだし、そのさじ加減をどうするのかが曖昧なまま、時坂さんに環境破壊させるから、そこが気になって話に入り込みづらい。 その話の核を曖昧にして、環境破壊でポイントがもらえるみたいな細かい設定やアイドリングの仕組みの説明を出してこられても、装飾過多に思えてしまう。


  • 『QあんどA』 (31話)庵堂弟をしごく陸上部の鬼コーチは、優秀な選手を指導してきた実績があると同時に故障者も多数出している人間だった、という話。  遊歩が鬼コーチに、自分のしごきのストッパー役を頼まれるという発想も面白かったし、ストッパーになると思いきや一緒に鬼になって庵堂弟をしごくという展開も面白かった。

    遊歩が庵堂弟の専属マネージャー役みたいなポジションに簡単になって、そのいい加減な展開の軽さが良い方向に転がってると思う。 そう言えば忍が庵堂弟を好きという設定はもうあってな無いような感じになっているな。


  • 『アサギロ』 (31~32話)沖田の弟子として薪割りや風呂抱きをやらされていた藤堂は、疑問を感じつつも続けるうちに、ヘソの下に力を入れるとはどういうことか、持っているものが自分の体の一部になるとはどういうことかを体得し、沖田に再戦を挑むのだったが、試合中、ボロボロになって雑念が消えた状態になった時に剣の冴えを見せたものの、またもや沖田に完敗するのだった。

  • 2話続けて読めて良かった。 31話で終わったらどうなるか気になり過ぎてた。 

    今まで沖田は剣の天才ではあるものの、考え方や情緒に問題のあるいびつな人間として描かれてきたけれど、この2話では、相変わらず剣以外にはうといものの、剣術に関して、単に感性だけでやっているのではなさそうな、実践で学んだ経験を知識としても蓄積している、賢い人間として見えるのが良い。

    前回だったか、沖田が藤堂に薪割りや道場の水拭きをやらせていたのを、剣の基礎を学ばせるためにやらせてるのだと山南は心の声として語っていて、それは山南のかいかぶりすぎじゃないかと思っていたけど、どうもそうではなくて、本当に剣の修業としてやらせていた節があるのが今回分かったのだった。

    剣術が向上した藤堂は、藤堂を舐めるのをやめた沖田に完敗したが、このまま自分の剣の上達が沖田のおかげだとは思わず行って欲しいかも知れない。 今回の試合は藤堂が真剣で沖田が竹刀で闘ったのだけど、沖田の強さだけではなく、斬り合いにおける刀の重さやちゃんと持たない事、剣を手放してしまうことの危険性も伝わってきて良かった。 面白いけど、話の進みがゆっくりだし、新撰組の話をどの辺まで続けるプランなんだろうか。

  • 『ぼくらのカプトン AEASON 2』 (7~9話)学園祭の映画でサッカー部主将が下手すぎて涙を誘ったり、サッカー部員達がスカートの中を覗こうとしたり、主将が不良に絡まれたマネージャーを助けたりする話。

    サッカー部を少し離れて、学園の出来事を話の軸にして、そこにに少しサッカー部員を絡ませるという展開は、サッカー部のみで話を進めるのに煮詰まったからな気がするけど、この方向の方がまだ面白くなりそう。


  • 『リンドバーグ』 (31話)マティアスの策略により瀕死となったシャークは、心配して飛び出してきたニットに自分と友人の夢の話を、遺言のように語り出すのだった。

    今回シャークの口から語られた、失われた翼を甦らせし者を待つという、この世の果てにいるリンドバーグの王の話は、ニットに父親探し以外の目的を与えたのだと思う。

    今まではエスペランサが作中で圧倒的な存在感を放っていたのに、結局決闘からシャークが死ぬ時までただの脇役に成り下がってて勿体なかった。 ティルダも一応人質の体なのに存在が薄かったし、結局エスペランサとシャークの愛憎を描ききれなかったなという感じ。  でも、ニット達がシャークの死体をエスペランサの元に置いて脱出するというのは、シャークが実は生きてたとか、改造人間にされたとかいう展開の可能性を残してるかな。

    なんだかんだシャークの死は、周りの反応があっさりだったように思うし、最後にニットが故郷のエルドゥラと遭遇したのは強引過ぎると思ったけど、新章に進むための区切りとして必要だったのかな。 でも次回最終回なら、今回の強引なまとめ方や展開は腑に落ちるのだけども。


  • 『バレてるよ!ジャンボリーヌ』 (19話)ひな子とシンイチの新婚生活が始まったのだが、ひな子の面倒くさがりな性格のせいでシンイチは苦労が続き最悪の結末を迎えることになるのだった。

    ひな子がひたすら嫌な感じに描かれているが、ひな子を溺愛している父親が一切出てこないのはやはり不自然だと思う。 今回は城ノ内も一切出てこなかったけど、次回完結というのは、この作品が終わるのかひな子のエピソードが終わるのかどっちなのだろう。コミックスの収録話数のせいなのか、無理に話を引き伸ばしてた感じがあったし、次回最終回でも問題ないとは思う。


  • 『アオイホノオ』 (43話)学園物を描くためには、今までのような適当でもごまかせた架空の星の世界とは違い、校舎など実際の建物をちゃんと描かないといけない、という事に悩むホノオは、原秀則の漫画を読み返して、背景を略して描くだけで済ませても良いと気づき安堵するのだった、という話。

    津田さんが久しぶりに登場した。 津田さんはトンコさんと違って、ホノオの独りよがりに厳しいツッコミをし過ぎることはないけど、がっぷり四つにホノオと向き合うこともないし、普通に話を聞き流したりするし、トンコさんほど重要な人間としては扱われないけど、ホノオを気遣いつつも、自分にとって重要な人間として扱ってない態度がリアルな人間って感じがする。 でも前は違ったんだっけかな。 以前は恋愛感情が少しあったけど愛想を尽かしたという表現かも知れない。

    校舎の外で延々石を削り続けてる学生は、地味に努力を続ける人間としての、ホノオとの対比で、いずれ完成させるのだろうけど、こういうシチュエーション前にどこかで見た気がする。 この作品かな。


  • 『まねこい』 (61~62話)荒場木は、トラウマになっている昔の彼女と再会して、自分や沖田は昔の彼女やその彼氏と生き方の違う人間なのだという事を実感し、関わり合うのをやめようと思うのだった。 一方で、風邪で学校を休み続けるハルを心配して家へお見舞いに行った奈波は、ハルとホンチーの間に何かがあったと知るのだった。

    荒場木と沖田が椛達と一波乱ありそうな展開だったけど、ここまで煽っておいて結局相手があっさり引き下がって肩透かし。 好意的に解釈すれば、何も起こらない純粋なサスペンスだけど。 ただ、荒場木と沖田をくっつけるためだけの話にしては大げさだったと思う。 あと荒場木の楓への恋心を、双子の椛に似てたからってだけで片付けてもう何も思ってなさげなのはなんか釈然としなかった。 ハルの方は、これで奈波がハルに呆れたらひたすら陰惨な漫画まっしぐらだし、奈波はハルを励ますかキスするかになるのだと思う。


  • 『FULL SWING』 (19話)大学卒業を控えた野球部の寺内は、ドラフトにかかることを条件に子持ちの女性にプロポーズするのだが、その彼女は、別れた夫やその母親からよりを戻さないか打診されて2人の間で気持ちが揺れるのだった、という話。

    今回の話は設定は面白かったけど、子持ちの女性と主人公の関係が希薄な感じで、別れも深刻さが伝わってこなかったのが残念だった。 あらゆる事が綺麗に片付きすぎというか、主人公の青年は、ドラフトで呼ばれず振られもする羽目に遭ったんだし、もっと悪あがきしたり醜態晒した方が人間味が感じられたのになと思う。


  • 『これが噂のエル・パラシオ』 (31話)桜花が試合に負けたことで、約束通り、素人レフェリーの忠輔はヒートへ移籍しようとするのだが、ヒートのオーナーに雇うのを拒否され、なぜかアズミの言われるまま、うだつの上がらない練習生と一緒にエル・パラシオへ返されるのだった、という話。

    今後もずっとエル・パラシオとヒートの対立軸で話を進めるのだな、という感じ。 長々とヒートとの抗争やってたのだし、よく考えたら分かることだったかも知れない。 ヒートで伸び悩んでいた練習生をエル・パラシオで育てさせることで、なぜアズミがエル・パラシオを抜けたのか本当の理由が分かるようになってくのかも。 自分がいたら他の選手が伸びないとかそういう理由かな?


  • 『ココロ、デッサン』 (3話)ロボットだから人の感情を理解できない田中は、そのせいで失恋したクラスメイトと仲がこじれてしまうのだった、という話。

    そうか、田中を感情のないロボットとして描く方向なのか。 最近漫画などでロボットが擬人化されて感情表現が当たり前なのに慣れ過ぎてたせいか、さらに作中で多少は感情があるような感じだったせいか、ロボットに感情がないっていう基本的なパターンを全く考えてなかったな。 当たり前のことに気づかなかったのは反省しないといけない。 ただ、感情がないロボットとして描き切れてないのではないか?とは思う。

    っていうか、前回の幼なじみの先生の話はあれで終わりか! 続くと思っていたのでかなり拍子抜けだった。 これは最終回もぶつきりで何も起きずに終わりそうだな。

    ただ、生徒達が野球やってる光景とか、取材や資料を基に描いたのか、ガヤガヤした感じがリアリティがあったし、友達の前では同情しつつ裏では笑ってるような人間の裏表のある感じとか、ありがちなパターンだったけどそれなりに話に収まりよく描かれてたし、瀬戸ミクモは思っていた以上に力あるのかなと思った。 でも話を動かすのがいつも主人公以外なのが気になる。


  • 『月の蛇』 (31話)戦に参加しなかった飛虎は王進から、翠華が飛虎に頼らずに自ら一兵士に紛れて戦に参加したことを知らされるのだった、という話。  圧倒的な力の差で宋国が負けてる最中に飛虎が参戦するのだけど、物語としていまいちピリっとしない感じ。

  • 『BULLET ARMORS』 (18話)イオン達は、セレナやバレットを取り戻すために何とかベイカーの基地へ潜入したのだった、という話。

    イオンの父親を気にしてるのがイオンじゃなくてカルトの方なのが微妙。 あとブリーダーを殺す異常者みたいのが出てきたけど、悪の描き方が極端でこの異常な男の絵柄も含めて作中から浮いてる。 

    近年の漫画でツッコミや悪い奴の表現が妙に極端なのがある気がするのは、話や演出で怖く見せるのが上手くない人が増えてるということなのか、世の中が刺激が強くないと伝わらなくなってるのかなんなんだろう。

    この作品ではないけど、目つぶししたり刃物や棘のある危険な武器で半殺しにするのがツッコミとして扱われるのには違和感がある。 そういうのは昔もあったと思うけど、当たり前のように見かける表現ではなかったような。


  • 『ちろり』 (6話)一緒に月見をするはずだったマダムが、急遽お客の忘れ物を届けることになり、マダムが帰るのを待つ間、ちろりは手持ち無沙汰にお店の中でうずくまるのだった、という話。

    店の中の、月明かりの影が差す静かな光景は悪くはないけど、相変わらず外の自然の風景に魅力がない。 あと、人を待つ、退屈ながらも味わいのある時間を見せるのが今回の目的だと思うけど、ちろりがマダムに依存し過ぎてるように思えてあまり好意的には受け取れなかった。


  • 『僕の友達は魔法少女』 (読切)主人公の俊には空を飛びたいという夢があって、その夢を同じクラスの魔法少女に叶えて欲しいと思っているのだった、という話。

    前回の四コマに引き続き、今回はストーリー物の斉藤ゆうの読み切り14ページ。

    空を飛べたかどうか分からないまま途中でギャグのオチがついたみたいに終わったけど、話としてオチてないし投げっぱなしにしか思えなかった。

    空を飛びたいという夢を、学校へ行く坂道を歩きたくないからって事のみに還元できてないから、作者が主人公の夢を踏みにじって終わったように受け取れるんだと思う。

    魔法少女は空を飛ぶ約束をした日にほうきを持っていなかったし、俊との約束を破ったと受け取れるわけで、そういうのも含めてただのギャグとしては読めなかったなあ。 後味があまり良くなかった。

    あと、テイストがバタアシ金魚時代の望月峯太郎っぽいかも。


  • 『妹先生 渚』 (14話)かみきり虫は、閉園して放置された甘夏農園から大量にやってきたものらしかった。 原のみかん農園は大打撃を負ったが、原や渚達はあきらめず駆除を続けるのだった、という話。

    珍しく2号続けて連載されていたが、次号は休載らしい。

    諦めない渚と諦める令嬢との対比は予想通りだけど、この恋愛編?が今回ですぐ終わったのは意外だった。 渚が主人公ってよりも群像劇の中の一人になってしまったな。 次回からまた新展開らしいが、展開が行き当たりばったりに思える。


  • 『第三世界の長井』 (28話)博士の娘が縛られて倒れているのが発見され、発見当時は死体のようだったのに、長井や帽子の男達が来ると生き返り、そして火山噴火星人が現れたのだった、という話。

    よく覚えていないけど、博士の娘は前に他の役で出てこなかったっけか。 今回はここ数回のような、登場人物の考えや関係性で話が進まずに、また台詞の言葉遊びみたいのだけで話が展開されていたし、ここ数回に比べていまいちだった。


  • 『信長狂想曲』 (31話)信長一行は、尾張津島の天王祭りに出かけたのだが、途中咳が止まらずに座を離れた明智の様子を見るよう帰蝶に言われたおゆきは、林の中で、サブロー扮する信長とそっくりの明智の素顔を見てしまうのだった、という話。

    信長を狙撃させたのは、秀吉だったことが発覚したり、帰蝶の美しさを明智が再確認したり、サブローと明智の顔がそっくりなのがばれたりと、話が大きく動いた回だったが、特に面白いという感じでもなかったかな。 ところで、登場人物が何かにハッとするような時に、目や顔のアップで背景を黒く塗りつぶして目の近くを斜線で白く抜いたりする表現を前回や今回やっているのだけど、これって前からやってたっけかな。 こういう古い漫画的な表現はあまりやらない作品だった気がするのだけども。



巻末の「ゲッサンしてみる。」では、ツール・ド本屋さんの第二弾を開始したけど、今回の話の山場である、編集のワタナベが、自転車では大変な箱根の登り坂を、車で荷物を運んで横山を手助けするはずが失敗、という展開が読んでいて分かりづらかった。 ワタナベが中腹で横山と落ち合うはずが、渋滞のせいでタイミングが合わず、もっと先の頂上を越えた関所で会うのだけど、その関所が頂上からどの位置にあるのか自分には全然分からなかったので。 

あと、次号の新年号から新連載攻勢が始まるとの事だけど、連載を予定しているゲッサンルーキーの人選が、自分が期待してる漫画家達のいない面子だったので残念だった。 良い意味で裏切られる事を期待したい。

というわけで、2011年度のゲッサンはこれで読み終えた。 実際には、2011年度内に2012年1月号も発売されてはいるけど、雑誌に表記された年号のキリということで。

読むのを中断する期間がたびたびあったというのも理由だけど、ゲッサンを読むのがしんどいことが多くなった。 今まで読んできて、普通に楽しめる作品は、『QあんどA』、『アサギロ』、少し落ちて『信長協奏曲』くらいだな。 といっても、『QあんどA』は悪ふざけが過ぎるような回が多くて、この連載をどうしても読みたいと思わせる作品とは言えなかったけれども。 週刊誌に比べて、月刊誌では、一話分ののページ数も多いから、つまらなかった時の読むしんどさも週刊誌以上な感じだけど、2012年はもう少し面白い連載漫画が増えてくれるとありがたい。

ところで、今月号には、「漫画作品が勝手にスキャンされている!!」と題して持ち主に変わって有料で漫画をスキャンしてデジタル化をする代行者を批判する文章が掲載されていた。 

自分の感覚では、スキャン代行業の料金は、その本や雑誌の持ち主の代わりに作業をやる手間賃という感覚なのだけど、出版社にとっては、他人の権利のある作品を使って金儲けをしてるという解釈になるらしい。

どれくらい需要があるのか知らないけど、時間や体の都合で自分で出来ない人もいるだろうし、一律全面禁止にするのは隙間産業の可能性としてもったいないと思う。 代行業者がスキャンデータを悪用する可能性もないとはいえないけど、最初から業者を犯罪者扱いする態度は違うだろう。 というか、出版社自らがデジタルスキャン代行業をやったらいいのに、と思ったけど、それならデジタル漫画を直に売った方がいいのか。 

この件とは直接関係はないけど、出版社は、人気漫画が本棚を圧迫するくらい何十巻を続刊を出している事に疑問を感じないのだろうか。 

2013年4月18日木曜日

ゲッサン30号(2011年11月号)

  • 『鉄楽レトラ』 (6話)カルメン部が女性の嫉妬を作品に生かそうとしていたのは、部員の富永が仲の良かった子にいじめを受けていて、そのいじめている彼女の気持ちを理解したいからだった。 そして同時期に、鉄楽の妹も同じく仲の良かった友達に厭がらせを受けていたのだった、という話。

    前回の感想で、鉄楽に靴をあげた女の子の話を少し書いたら早速登場してきて焦った。 今回鉄楽は、その女の子を妹の学校で偶然見かけて驚いていたけど、前に、体育祭か何かの交流試合で既にニアミスしてなかったっけかな。 あの時はすれ違いで気づかなかったんだっけかな。 思い出せない。 ただ、今再会しても鉄楽はまだ何もしてないも同じなので、相手の頑張りを見て自分も頑張ろうと思う的な事以外何も起きなさそうだし、今回は遠くから見てるだけと予想。

    ところで、鉄楽の妹のいじめへの対処法は相手との我慢比べみたいなものだったけど、それで解決しないから鉄楽が何とかしようとしてたわけで、要するに、妹の対処法は失敗していたのではないだろうか。


  • 『ハレルヤオーバードライブ!』 (30話)校内でのゲリラライブ後、先生達に捕まらずに済んだ小雨達だったが、その後にライブを敢行した浅緋の歌を目の当たりにして、自分達との圧倒的な力の差を思い知らされるのだった、という話。

    最後の方の小雨の叫びとか、生徒会長の口の悪さとか、なんか登場人物達の感情と台詞と表情がバラバラで噛み合ってない感じで、話にノれなかった。  あと、ゲリラライブも、計画が杜撰だし犯人が先生達にバレないとおかしいわけで、大味な設定や展開をなし崩しにするくらい勢いがある作品でもないし、バレて部が解散とか大問題になるとか作中で言っているのに、描かれる展開にリアリティが薄いから、浅緋の、ゲリラライブをやったのが小雨達だというのが先生にバレる事を天秤にかけた、バレない代わりのハルに対する自分のバンドへの勧誘も、特に緊張感も感じられず白々しく思えた。 加入しかけたハルも浅慮で安易な感じがしたし。


  • 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる』 (2話)時坂さんが未来から現代へ来た理由は、未来では地球の環境を保護しすぎた結果、人類が生きづらくなっているので、過去へ戻って環境保護を止めさせ逆に環境破壊するためだった、という話。

    後のエピソードで掘り下げるのかも知れないけど、物語の肝である、未来がどう大変になっているかとか、現在の地球で環境保護をどう止めさせるかとか、そこを簡単な説明で切り上げておきながら、SFやら科学やらの説明的な台詞や単語の羅列を長々といまいちかみ砕かれていない状態で展開させるから、細かく説明すべき所がずれてるように感じたし、肝心の話の筋の印象が薄くなったように思えた。 なによりも説明台詞を読むのが面倒だったし。

    時坂さんの話を主人公が受け流し過ぎだし、色々な事が起こるわりには特に物語の起伏もなくどんどん話が進んでくだけのような感じ。 もっと未来の事や主人公がどう未来と関わってるのかを、気にさせる程度には掘り下げてからドタバタ話を展開させて欲しかった。


  • 『ぼくらのカプトン SEASON 2』(4~6話)先輩達を超えるための練習メニューの増やし方が変だったり、谷口主将が補欠な事を他校のチームに良いように誤解されたり、パンストの蘊蓄を語り合ったりする話。

    相変わらず落ちが緩すぎて面白くなりかける前のさざ波で終わってるし、蘊蓄のやり取りの中の、それぞれのこだわりが大してこだわってるようには思えない大ざっぱなものだったりしていまいちだったけど、他校の人間を通して、御幸高サッカー部が語られる5話は落ちがすぐ分かる展開ではあるけどまだマシだった。


  • 『Waltz』 (25話)首折り男はなぜ生きていて、今までどうしてたかの種明かし編。  あらすじの通り、ほぼ全ページに渡って首折り男が生きていたトリックと、今まで語られなかった首折り男の裏での行動が開陳されていた。 ちょっと冗長かとも思ったけれど、種明かしをキッチリ描くことで、首折り男が生きてたことに説得力を持たせるのは悪くないと思ったし、虐められっ子だった苺原の意識の変化も同時に描いていたので、納得は出来た。 ただの高校生の苺原が殺し屋を演じるのは無理があったし。

    ただ、苺原が自分の意志でやってると思っていた今までの行動が、首折り男に自発的に協力していたとはいえ、他人の作戦に従ってたわけだから、苺原の成長物語という部分では少し弱くなったかな。

    それにしても、首折り男の獲物だった帽子卿をあっさり蝉が殺してしまい、殺し屋三つ巴のクライマックス感がなかったのは少し肩透かしだった。

    今回の最後で、コンビニ店長と岩西が、蝉を殺す契約をしてる事が発覚したけれども、前回の、岩西が蝉を信頼し、蝉がやたら岩西に懐いてるような2人の愛情表現を描いておいた事が、今回の岩西の裏切りの逆説的な伏線のように扱ってたのには唸らされた。 まあ、BLっぽい要素は前回だけじゃなく何度もあったけど、そういう要素をただのファンサービスだけにしてないで物語に生かすのは上手いと思う。


  • 『QあんどA』 (30話)庵堂弟に陸上競技の才能があるようだと言うことが、鬼島監督によって発覚する話。  やっと庵堂弟の才能の発露が見られたけど、ちょっと急でこじつけを感じなくもない。 このまま庵堂弟が自分の目標を見つけ努力して兄は消えて終わりだろうか。

  • 『アオイホノオ』 (42話)ホノオがトンコさんから性的に誘われてるようないないような状態に陥っている一方で、庵野達は、岡田から制作を頼まれたアニメの内容について、いまいちどう違っているのか分からないが、意見の相違から武田と揉めているのだった、という話。

    ホノオがメインの話なのに久しぶりに面白いなと思ったのは、トンコさんがホノオ達に対して距離を置いた批評的なポジションにいるからなのだと思う。

    ホノオ達おたくに対するニュートラルな距離にいるのは、トンコさん以外にもホノオが柔道を習いに行ってる道場?にいる子達もそうだけど、その子らは、ホノオにとって、無垢というか、ちょっと馬鹿にすべき無知な存在のように描かれていて、トンコさんのような、意見を言って、その意見をホノオが素直に聞き入れるという立ち位置にいないので、ホノオとの考えや意識のずれのある存在として描かれはいても、扱いが軽いしホノオに鋭い意見を言わさせてもらえるポジションにはいないのだよな。

    あと、ホノオの出てこないガイナックス黎明期の話の面白さは、暴走するおかしな人達しか出てこないカオスな面白さなのだけど、ホノオが中心の話だと、暴走はするけど、空回って暴走の熱が冷めるというか、その空回り具合が、同じ事の再生産みたいなことばっかりで飽きてきた。


  • 『ちろり』 (5話)ちろりが、仕事で着ている和服の、古くなった掛け衿?を取り替える話。  今回は台詞を一切無しにして、就寝前に、自分の部屋で、仕事中の出来事を思い起こしながら掛け衿?を外して新しいのを縫い付ける、というちろりのしぐさが描かれるのだけど、正直、掛け衿を外してるのが視覚的に分かりづらかった。 分かりづらい理由は、着物から掛け衿?を外す過程を、糸を外したり、外した後の掛け衿?を見せるだけで、着物から外している過程の状態を省略して描いてないからだと思う。

    この作品は、作者が、ちろりを可愛く描いて、描きたいフォルムや構図で描ければそれでいいみたいな所があるのではないだろうか。 ちろりは可愛く描けているけど、仕事の細かい描写を描く、見せる、というのが上手くないなと思う。


  • 『アサギロ』 (30話)近藤から沖田の弟子になるよう命じられた藤堂は、沖田に雑用を押しつけられながらも、試衛館の人達と交流を深めていくのだった。

    今回で、藤堂らの話の中でしか出ていなかった、沖田と藤堂の試合の経緯が描かれたり、山南が伊東道場に行って藤堂が試衛館へ来た理由を調べたりと、伊東甲子太郎や鈴木三樹三郎が近藤達と合流する前の下準備といった展開だった。

    最終ページの煽り分に次号は大人気御礼で2話同時掲載と書いてあったけど、単に次号は「妹先生 渚」が休載でその穴埋めにもう1話掲載するだけじゃないのだろうか。 今回はいつになく顔芸が多かったな。


  • 『リンドバーグ』 (30話)シャークとの戦いの最中、マティアスは野心剥き出しに本性を現し、ティルダや空賊を人質にシャークの命を奪おうとするのだった、という話。  シャークは仲間を守るために自分の命を捨てるわけだけど、まあ、ほぼ前回の予想した通りかな。 マティアスが汚い手を使いグラナロッサを手に入れようとしてる位野心家だとは思わなかったけども。

    これは、数年後成長したニットが、空賊を率いてマティアスが王になったグラナロッサと戦う展開だろうか。 シャークは本当はエスペランサを殺そうとは思っていなさそう。 あと、シャークとニットの関係はアニメのグレンラガンでのカミナとシモンの関係のように描こうとしているのかな。


  • 『ここが噂のエル・パラシオ』 (30話)桜花が試合に負けた事で、エル・パラシオのベルトはアズミに渡り、もう一つの賭の対象だった忠輔も、アズミのいる団体へ行くことになり、忠輔は桜花達の家から去るのだった。

    桜花を試合に負けさせてどう話を進めるのかと思ってたけど、桜花が失ったもの(ベルトや昔の仲間・団体の繁栄、忠輔)を取り戻すという事と、忠輔が失った記憶を取り戻す、という事が重ね合わされたのは上手いなと思った。

    これで桜花やエル・パラシオと忠輔の失ったものが同時に取り戻せたら良い最終回になりそうだけど、安易な理由で忠輔がエル・パラシオに戻ってだらだら話が続きそうな予感。


  • 『FULL SWING』 (17話)兄を電車の事故で亡くした弟は、兄のいた大学の野球部のセレクションテストを受けに行ったのだが、そこには兄が死ぬ原因を作った青年も来ていたのだった、という話。

    兄の死を乗り越えようとしている青年と、人を死なせてしまった事の罪滅ぼしをしようとする青年が出会ってどうなるか、という難しい設定で、死なせた側の青年が、試験管の人に、相手が受かるよう懇願するのはやりすぎと思ったし全体的に古くて大味な話だったけど、それなりに熱い展開になって面白かった。 正直片方の青年の妹はいなくても成立しそうな気もするけど。


  • 『マコトの王者』 (30話(最終話))大地が国民栄誉賞をもらうくらい活躍し、天童は父親の仕事を手伝いつつ結婚し、小さい子供もいる、という境遇で再会した2人のマコトは、再戦することを約束するのだった。

    結局最終的に天童の改心話に落ち着いてしまったし、天童のその後を掘り下げるだけじゃなくて、大地が結婚したかどうかとからへんも描いて欲しかったけど、一応これからもライバル関係は続くように見せつつの大団円だった。 読んでいて乗れない回もあったけど、熱血要素があって良作ではあったと思う。


  • 『ココロ、デッサン』 (2話)ロボット高校生田中とヒロインの小泉には、共通の幼なじみであり教師でもある小泉という男がいるのだが、その小泉は、密かに小泉を自分の物にしようと機会をうかがっているのだった。

    前回の1話もそうだったけど、悪意ありげな間男?の不穏な顔つきなどの描き方が、あざとくて露骨な描き方のまねこいよりは悪目立ちせずに上手く話の展開になじんで描かれていると思った。 ただ、三角関係の恋愛をシビアに描くなら主人公がロボットなのは逃げなのではないかという気もする。

    今回のエピソードは次回にも続くようだけど、この作品は毎回田中と小泉の仲を裂くライバルが現れてそれにどう対処するかっていうパターンなのだろうか。 三角関係の一極になる人間がヒーロー物の怪人や、ウルトラマンの怪獣のように毎エピソード登場するって展開だとしたらちょっと面白いパターンかも。 でも恋愛物って基本そんなもんだっけか。


  • 『BULLET ARMARS』 (17話)カルトと闘って力尽きかけた体をなんとか動かし、ベイカー軍団からセレナを助けようとしたイオンだったが、ギリギリの所で助けられずバレットもろとも奪われてしまうのだった、という話。

    イオンが単にセレナと離ればなれになったり、あっさり助けたりするよりは、バレットごと離ればなれになる展開は面白いと思うけど、結局大した策もなく力押しで取り返しそうな感じがする。 でもイオンって、セレナを奪われ命を狙われてるとはいえ、死なせそうな位人間の顔面をパンチするようなキャラクターだったっけかなあ。

    あと、ずっと探してた父親の消息が前回初めて分かったにもかかわらず、今回父親のことを一切気に欠けないのは、セレナやバレットを失って大変になってるとはいえどうかと思った。 結局父親探しはただの物語の味付けでしかないという事を作者が体現させてしまった感じ。


  • 『まねこい』 (59~60話)ホンチーに風邪をうつしてカラオケ大会を休ませる作戦の最後のチャンスとして、ハルは、夜中にホンチーを呼び出すのだが、ついに自分が音痴という本当の事を話してくれると信じて現れたホンチーに対して、ハルは何を勘違いしたかキスをしてしまうのだった、という話と、浮気性の椛の彼氏を罠に掛けようとした沖田が一枚上手の相手に良いようにあしらわれる、という話。

    ハルのごまかしがバレて、ほんちーとハルの関係が最悪の展開になったけど、ハルに限らず恋愛のゴタゴタを上手くコメディタッチに落とし込めずにシリアス一辺倒になりすぎだと思う。 猫太郎の設定をほとんど生かせてないし。 あとみんなで海に行った時といい、軟派な人間を嫌な奴として描き過ぎて読後不快感が残ってしまう。 シリアスな恋愛物は別の作品でやってみた方が良かったのでは。


  • 『舌鼓を滅多打ち』 (読切)調理部の顧問と生徒3人の織りなす、何度か読み切りを掲載されている斉藤ゆうのコメディ四コマ漫画。12ページ。  この人は妙な緩いユーモアがあるから四コマには合ってるかも。 ただ、女性キャラは可愛いけど、絵がやっぱり上手くなくて、付け髭と口の違いが分かりづらかったし、題材として出てくる料理ネタも、漫画を書くために調べた事をそのまんま使ったかのような、こなれてない感じがあったのが残念だった。 顔のアップだけは上手いのだよな。

  • 『イボンヌと遊ぼう』 (31話(最終話))宇宙に3年滞在の予定を1年で終え帰還したイボンヌとはじめは、学校のみんなと無事再会し、イボンヌはこれから、高校の教職に復帰せずに動物園で働くと伝えるのだった。 予想に反して恋愛要素が一切無く戻ってきたなあ。 一応大団円という形で終了。 決して面白いとは言えない作品だったけど、読んでも不快感のあまりない妙な味わいの作品だった。 絵も、イボンヌの顔は最初は定規で引いただけのような固い味気ない線だったのが、今は相変わらず上手くはないけど線に生気があって悪くはない感じ。 話を作るのが上手くなさそうなので、次チャンスがあるなら原作付きで何か描いて欲しい気がする。

  • 『よしとおさま!』 (30話)黒彦に連れ去られたよしとおは、自分を殺そうとしている黒幕の人間と対面するのだった、という話。

    結局サビ丸が助けに来て次回へ続くのだけど、黒彦によしとおを褒めさせたり、よしとおのイメージアップ回という趣。 自分や黒幕であるよしとおの叔父の内面をよしとおが見透かしてそのことに黒彦が動揺しつつ関心するっていうのは、前回自分がした、黒彦がよしとおの言葉に心動かされる、という予想とあまり違わなかった。 ただ、その見透かす言葉に、いまいち説得力を感じられなかったかな。 あと、前も書いたと思うけど、時々出てくる不良っぽい言葉遣いが、よしとおのキャラクターに合ってないように思えて違和感がある。


  • 『妹先生 渚』 (16話)渚には付き合ってるような付き合ってないような相手である、原という夏みかん農園の跡取り息子がいるのだが、原に恋をする別の女性が出現しても相変わらず二人の仲は進まないのだった。 渚の恋愛編?突入。 32ページ。 渚と原のウブな会話や素振りが昔懐かしい漫画のテイストで逆に新鮮な感じがした。 原は夏みかん栽培を無農薬で作ることに挑戦していて、今回かみきり虫が大量発生してしまったわけだけれども、これで無農薬栽培を失敗して、横恋慕してる女性が別の案を出すか諦めさせようとして、渚が続けるのを応援するって展開と予想。

  • 『バレてるよ!ジャンボリーヌ』 (18話)色々あったが、結局突如現れた高収入のイケメンとひな子が結婚する事でひな子争奪レースは終了したのだった。

    ギャグ漫画では急に新キャラが出てきて全てかっ攫ってくような展開はわりとあると思うのだけど、ひな子争奪戦は特に盛り上がりもなくやっと終わったかという感じで、散々レース前に登場していた、気軽に結婚させなそうなひな子の怖い両親を出さずに終わったのも話を投げてる感じがした。


  • 『月の蛇』 (30話)宋国と梁山泊の戦いの直前に、宿元景は、策略によって討伐軍最高司令官の座から降ろされ、飛虎は、まだ立ち直れず矛の声も聞けないまま、戦いへの参加を拒否するのだった、という話。

    北風のような玲綺の励ましや誘いは飛虎の胸に届かずに太陽のような翠華の言葉が届くという構図は分かりやすかった。 しばらく出てこなかった青磁が出てきたり、飛虎が今まで戦った梁山泊の面々が総登場したりしたので、今月号でで戦いはこれからだエンドになるんじゃないかと一瞬焦ったけどまだ続くようだ。

    すっかり忘れてたけど飛虎って、梁山泊を倒すために翠華に雇われてたのだったな。 ここ数話の飛虎の行動原理が完全に黒い蛇矛を倒す事のみになっていたので忘れてた。 宿元景が司令官から外された展開も面白いし、決戦に向けて盛り上がってきて良い感じ。


  • 『第三世界の長井』 (26話)長井が落とした物を本人に返しに行った帽子の男は、出かける前に自分が読んでいた設定と同じような話を、長井から聞かされるのだった。

    前も出てきたけど、紙に設定の羅列が書いてあって、その通りに世界が進んでいるという事だな。 その設定には投稿者名のようなものが括弧内に書いてあるので、色んな人から意見を募って作られた世界が、この作中の世界という事になる。

    5W1Hゲームみたいな、いつ・どこで・だれが・なにをしたを個別に書かせてそれをランダムに組み合わせて話を作るっていうのを複雑にした感じ? 紙に書かれた設定は数字が飛び飛びになっているので、全ての意見が採用されてるわけではなく、前にこの紙が出てきた時にいた謎の集団が取捨選択をしているのだろう。

    帽子の男が、本人の発言通りに神だとすると、つまりこの「第三世界の長井」という作品の作者という意味での神なのかも。 今はその立場を降りて、世界の設定を読む傍観者なのだから、この作品の物語を作る事をやめて他人任せにしてるってことで、作者の出てくるメタフィクション漫画という事になるのか。

    ということは悪魔として出てきた、帽子の男を見つめる女は編集者? 仮に世界観が分かったとしても、この作品はそんなに面白くはならないけれども。


  • 『信長協奏曲』 (30話)帰蝶の世話係をしている敵方のくのいちのおゆきは、故郷へ帰り、上杉謙信に信長が狙撃された事などを報告の後、姉ともしばしの歓談をするのだが、その話しぶりからおゆきの姉は、妹が信長に好意を寄せていると気づくのだった。

    そういうそぶりがあるようには読めなかったので、おゆきが信長に好意を持つ展開になるとは思わなかったな。 この漫画は、無言だけど何か心に一物もってるっていう表情をよく描いていると思うのだけど、あれは企みの表情じゃなくて、普通に何らかのストレートな感情表現のつもりの事もあったのかなあ。 好きで見つめているとか。

    今回は、浅井家のエピソードもあって、長政に浅井家当主としての自覚や人間としての成長があるのを父親の久政や妻のお市とのやり取りを通して描かれていた。



今回も、「ゲッサンしてみる。」はツール・ド・本屋さんのみで、今回は書店巡りから脱線して、まんが甲子園というイベントのレポートをしていた。  相変わらず特にどうということもない漫画だったけど、島本和彦の話を元に描いたという、去年の小学館だったかの謝恩会1ページ漫画(ネーム)だけは、構成がしっかりしてるし落ちもちゃんとあって面白かった。

野球甲子園編はWEBに載っているとのことだけど、まだUPされてるのか分からないし全く見に行く気が起きないなあ。

今号の「編集部こぼれ話」に、ゲッサンは多くの若き才能にチャンスを与えることを使命としている漫画雑誌です、と書いてある。 それはゲッサンを購読してきた人なら誰でも分かっていることではあるんだけど、 新人に連載の場を与えて育てるのは良いが、その育つ前の未熟な作品を毎号お金を払って読まされている雑誌購読者に対する責任を編集側がいまいち感じてなさそうなのが引っかかる。

読者に対しては、以前、長い目で見守って欲しいとか言うことも書いていたとは思うけど、読者に対する編集者の責任は、面白い漫画を届けることであって、漫画家の成長過程を見守らせることではないはずだ。 新人の漫画が面白くないと言うことは、作者の未熟さももちろあるだろうが、それを面白くさせられなかったり、面白くないまま雑誌に載せてしまう編集にも問題があると思う。

たとえば、かんばまゆこの連載は、既に大したアイデアもなくただ引き伸ばしてるだけのような状態なのに連載を続けさせる必要があるのだろうか。 ベテランも、『いつか空から 』は休載したままだし、『妹先生 渚』は何度も休載したあげく隔月連載の状態だし、中堅のまねこいは当初の設定無視して陰惨な方向に突き進んでるし、編集の仕事が上手く行っていないのではないだろうか。


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別冊付録 ゲッサンルーキーズ

  • 『処刑人の精度』 母親を延命させるために作った借金の返済をするために、金を回収したり人を殺してきたものの、母の死を切っ掛けに目的を喪失した男と、その男に自首を進めるナースとの悲喜こもごもの話。

    自分が撃った拳銃の音が切っ掛けで病床の母親がショックを起こし、それが死に繋がったという設定を生かせてないのが勿体なかった。 あの日病室で撃った銃弾は、同じ病院にいた母親の心臓も打ち抜いていたも同じだという不条理をあっさり片付けて、自首しろ/しないという話に収斂させるのは、本当に勿体ないと思う。

    あと、母親のためとはいえ人殺しをした男に対してナースに「ある意味、不可抗力とはいえ」と言わせたのは人の死を安っぽくさせたと思う。 というか、全体的に話の作りが安っぽいし、前回の読み切りの『ドナー&レシピエント』もそうだったけど、設定が緩いと思う。


  • 『アルシエルの心臓』 貧血になっては学校で倒れている輪日郎は実は、代々悪霊退治をしている家系の人間だった、という話。  自分自身の事を名前で呼んだり、口調やリアクションが甘えるようだったり、主人公の青年がナルシストっぽくて読んでいて気持ちが良くはなかった。  主人公が、よしとおさま!に出てくるサビ丸みたいな女性的な所のある青年なので、この漫画家が女性だったとしてもおかしくはないなと思うし、女性読者受け狙いのキャラ造形なのかな。

    あと、悪霊の姿も、悪霊を退治する輪日郎の姿も可愛らし過ぎて、シリアスさの欠片もないから、悪霊退治が闘ってるという感じがしなかった。 絵は上手いけど表現があまり上手くないという感じ。


  • 『DIRTY CARNIVAL』 神の予言を覆すために天使を殺す2人組の悪魔の話。  大味なバトル漫画という感じ。 天使と悪魔って言う設定にしてるけど、どっちも粗暴なモンスターとしてしか描けてないし、神と悪魔という設定じゃなくても話として成立しているのでは。 前回の『ヴァラドラ』もだけど、絵は荒いけど少女漫画っぽいキャラデザと思う。

  • 『オバスケ・サマー』なぜか自分だけ女生徒の幽霊が見えてしまったことから、その幽霊と因縁のある同じバスケ部の先輩を倒すために、幽霊からバスケを教わる青年の話。  作者にある程度キャリアがあるせいか、この別冊で唯一気兼ね無く普通に読める作品だった。 そもそもプロではある意味当たり前のことではあるけど、読みやすかったし。 主人公と幽霊の女の子、そして先輩や脇役の他のバスケ部員が、出しゃばりすぎず上手く話に収められていたと思う。

    あえていえば、先輩に対する女の子の思いがあっさりし過ぎかなという気もするけど、恋愛物ではないし悪くはなかった。 できるなら、ゲッサンで即何か新作を連載して欲しい。